ある写真家の歩いてきた道

ストロボ (新潮文庫)

「ストロボ」真保裕一 (新潮文庫)

五十歳の話である第五章から始まり、第一章の二十二歳に向けて時間を遡って行く。このスタイルの物語は、映画「メメント」で初めて見て、その後韓国映画ペパーミント・キャンディー」でも取った手法だった。だから手法として目新しいことは無い。小説として優れているのは、やはり人の心の動きを自然に描いているところだと思う。このツボをわかっているから、真保氏の小説にははずれが少ないのだろう。平凡、でもないけどよくある、言い換えれば感情移入しやすい男の仕事がテーマになっている佳作である。

あとがきで著者自身によって種明かしがされているが、ここまで書く必要は無かったんじゃないかな。