青い鳥

ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)

「ベロニカは死ぬことにした」パウロ・コエーリョ (角川文庫)

端から見れば申し分のない人生を送っているように見えるベロニカは、死ぬことにした。今はまだ若く美しいが、この先年老いていくことは、自分が劣化していくことだと思ったからだ。漠然とした未来への不安と言い換えてもいい。世間の流れが速く、または早いように見え、否応なく将来のことを考えさせられる現代では、誰もが多かれ少なかれ感じていることだろう。楽天的でいることが許されなくなっているのだ。
ベロニカは周到に準備をして自殺を図るが、死にきれずに精神病院に収容される。医師には余命幾ばくであると宣告された。早く死にたいと思っていたベロニカだが、他の患者達と接しているうちに、次第に生きる意味を見いだしていく。自分の人生に意味など無いと思っていたのに、他人のために生きたい、せめて心の中に自分を刻み込んでほしいと思うようになるのだった。
人生は他の人との相互作用があってこそ、充実するものだろう。しかし、今はごく一部の人の与えるものの力が大きくなりすぎて、その他大勢が自分の存在価値を見いだしにくくなっている。自分の生きる意味は、自分のごく近くでだって見つかるのだ。