政治への無関心を憂う

ダイスをころがせ!〈下〉 (新潮文庫)

「ダイスをころがせ!(下)」真保裕一 (新潮文庫)

この小説を書いた最も大きなモチベーションは、一般市民の政治への関心が極端に低いことなのではないかと思う。そして現在の日本の政治そのものへの問題提起から、選挙の仕組みへの批判へと繋がっている。

選挙の仕組みを決めるのは政治家自身である限り、いまの議員としての立場を守ろうとするのだから、自分の当選の可能性が低くなるような制度の変更は誰も行なおうとしない。いくら非議員が叫んだって政治は変わらないのだ。実際問題として、国会の政権与党である自民党が多数派を占めるためには、組織票が利くように投票率が低い方がいいという状態では、投票率が上がるような制度改革は行なわれにくい。

選挙制度や、政治を自分の思うように変えたければ議員になるしかない。これが天知が衆議院選挙に出馬した理由だった。そこまでできないにしても、せめて選挙に行って一票を投じることで、もっと政治に参加しようではないかということが、著者の最も伝えたかったことのように感じた。

下巻の中盤以降は途中で読むのを止めることができず、一気に読み通した。真保氏らしい佳作である。